②診察、治療を受けた時の社会保険給付

社会保険

病気やケガをした時に社会保険から給付されますが、まずは「治療と休んでいる間の給付」に関してお伝えします。

健康保険の場合

仕事以外でケガや病気をしたときに医療機関で診療・治療されますが、その時の「療養の給付」を詳しくみていきましょう。

以下は「健康保険給付」の全体像です。

区分 給付の種類
被保険者 被扶養者
病気やケガをしたとき 被保険者証で治療 療養の給付 家族療養費
入院時食事療養費
入院時生活療養費
保険外併用療養費
訪問看護療養費 家族訪問看護療養費
立替払 療養費 家族療養費
高額療養費 高額療養費
高額介護合算療養費 高額介護合算療養費
緊急時の移送 移送費 家族移送費
療養のため休業 傷病手当金
出産したとき 出産育児一時金 家族出産育児一時金
出産手当金
死亡しとき 埋葬料(費) 家族埋葬料
退職後(継続) 傷病手当金
出産育児一時金
出産手当金
埋葬料(費)

いわゆる被保険者自身の療養は以下の5つです。

給付(もらう)を考えるよりも、いくら払うか(自己負担)を考える方がわかりやすいです。

①療養の給付 診察、処置・手術その他の治療や薬剤または治療材料の支給、在宅療養の管理と、病院・診療所への入院、それらの療養のための世話、その他の看護で、その30%~10%を負担する。
②入院時食事療養費 一般の方で1食につき460円から低所得者等の方で260円~100円
③入院時生活療養費 医療療養病床に入院する65歳以上の方の生活療養(食事療養並びに温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養をいう。)
食費 1食460円~130円 居住費 1日460円(難病患者等0円)
④保険外併用療養費 保険が適用されない診療があると保険が適用される診療も含めて、医療費の全額が自己負担となります。しかし厚生労働大臣の定める「評価療養」と「選定療養」に関しては、その部分は全額自己負担ですが、保険内診療については通常の保険診療で30%~10%の自己負担です。
⑤訪問看護療養費 居宅で療養している人が、かかりつけの医師の指示に基づいて訪問看護ステーションの訪問看護師から療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合、その費用の30%を自己負担します。

以上のうちの10%~30%を自己負担しなければならない①、④、⑤に関しては、その負担額が高額になった場合は「高額療養費」の対象になります。高額療養費の試算サイトはこちらです。

以上は会社員等の健康保険からの給付ですが、では自営業の方などが加入する「国民健康保険」はどうなっているのでしょうか?

以下国民健康保険の給付内容ですが、健康保険とほとんど同じですね。

法定給付【絶対的必要給付】 実施が必須であり、給付内容は法令で規定されている
①療養の給付 疾病及び負傷に関して、診察、治療等の療養を給付
②入院時食事療養費の支給 入院時に療養の給付と併せて受けた食事療養に要した費用を支給
③入院時生活療養費の支給 入院時に療養の給付と併せて受けた生活療養に要した費用を支給
④保険外併用療養費の支給 先進医療等の「評価療養」や選定により特別な病室の提供等の「選定療養」を受けた時に療養全体のうち、特別料金部分は自己負担としつつ、基礎部分は保険給付を行うもの
療養費の支給 療養の給付等を行うことが困難と保険者が認めた場合に、療養の給付等に代えて支給
⑤訪問看護療養費の支給 居宅で療養する者が主治医の指示を受け、訪問看護ステーションから派遣された看護師等に療養上の世話や必要な診療の補助を受けた費用を支給
特別療養費の支給 保険料を納めることができない特別な理由がないにもかかわらず、保険料を滞納し資格証明書を交付された者が療養を受けた時に、療養の給付に代えて支給
移送費の支給 移送により診療を受けた場合に、疾病や負傷により移動することが著しく困難で、緊急その他やむを得なかったと保険者が認めた場合に移送に要した費用を支給
高額療養費の支給 同一月の療養に要した費用が著しく高額である時に、自己負担額として支払った額の一部を支給
高額介護合算療養費の支給 医療保険と介護保険のそれぞれの負担が長期間にわたって重複して生じる時に、年間の自己負担額として支払った額の一部を支給
法定給付【相対的必要給付】 法律上「給付を行うものとする」とされている(ただし、特別な理由がある場合は実施不要
出産育児一時金の支給 被保険者の出産に伴い一時金を支給
葬祭費の支給または葬祭の給付 死亡した被保険者の葬祭を行う者に一時金を支給、もしくは葬儀の執行に必要なものを支給
任意給付 給付を実施するかや実施する場合の給付内容は保険者で決定できる
傷病手当金の支給 疾病または負傷により業務に就くことが出来ない場合に、療養中の生活保障として支給
その他の給付 (例)出産手当金の支給:出産により業務に就くことが出来ない場合に、療養中の生活保障として支給

国民健康保険料に関しては市町村によって異なり、市町村公式のシミュレーションサイトはないのですが、民間のサイトで「国民健康保険料計算機」というものがあります。(自己責任で御覧ください)

労災保険の場合

では、仕事上でケガや病気をした場合の方はどうでしょうか?以下、労災保険の給付内容です。

「必要な療養(の費用)の給付」とシンプルですね、健康保険と違って。

保険給付の種類 どういう時に 健康給付の内容
療養(補償)等給付 業務災害、複数業務要因災害または通勤災害による傷病により療養するとき(労災病院や労災保険指定医療機関等で療養を受けるとき) 必要な療養の給付※
業務災害、複数業務要因災害または通勤災害による傷病により療養するとき(労災病院や労災保険指定医療機関等以外で療養を受けるとき) 必要な療養の費用の支給※

なぜこんなにシンプルかというと、仕事上の労災では、「自己負担」がないからなんですね。ま、通勤災害の休業給付の200円などは無視してですが。

健康保険は自己負担額が給付によってそれぞれ違っているので、ごちゃごちゃと分かれているのです。

自己負担が0だったら、いちいち~療養費、など分ける必要ないんですね。

労災は、療養をうけても、入院して食事をしても自己負担0です。これは「必要な療養の給付」の場合で「~の費用の支給」の場合は医療費を一旦自分で立て替えて、後で還付してもらいます。)

療養の給付はいつまでか?(労災の場合)

最後にいつまで療養の給付は受けることができるのでしょうか?

それはそのけが、病気が治癒するまでです。それ以降は後遺障害が残った場合、等級によって「障害」の給付に代わります。

では、「治癒」って何でしょうか?

病気、けがの前の状態に戻る、ではありません。それ以上療養を継続してもそれ以上状態が改善しなくなり、症状が固定する、です。

勘違いされやすいのが、①まだ痛みが残っているとか②一時的に曲がりにくかった箇所が曲がりやすくなったとかですね。こういう状態だと「まだ治癒していない」ということで、リハビリのため柔道整復師さんところや、整形外科などに療養をうけにいく場合は要注意です。労災からの給付がでない場合があります。

健康保険の場合は特に「治癒」に関しては曖昧です。治ったと思っても痛みがあったりして病院に行って、診察してもらったり、薬を出してもらうと「療養の給付」を受けることができる点で労災とは違いますね。

労災は治癒していると療養の給付もそうですが、休業(補償)給付も支給されなくなります。

もっとも治癒している場合は、一定の場合、労災からは障害の給付が、健康保険は代わって厚生年金保険、国民年金保険から障害の給付が支給の対象となります。

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